ゲームアウェアネスプログラム対談Vol.7は、フットサルのインドネシア代表監督として活躍する高橋健介氏との対談です。年間通じて実施した「マインドセット」やチームの共通言語を決める「ターミノロジー」を導入したことで変わったチームの様子や「時短」でもチャレンジできる強いチーム作りについてインタビューします。

本日の対談:フットサル インドネシア代表監督 高橋健介

平林:今回は、元フットサル日本代表選手で元Fリーグ監督、現在はフットサルのインドネシア代表監督として大躍進中の高橋健介氏との対談です。どうぞ宜しくお願いします!

高橋:宜しくお願いします!

平林:昨年まで一緒にFリーグのバルドラール浦安で指導させて頂きましたね。今はインドネシアで代表監督として活躍中ですが、インドネシアでの活動はいかがですか?

高橋:インドネシアではトップ代表チーム、U-20、女子代表の監督を務めているのでとても忙しいです。当初は、年に何度か帰国する予定ではいましたが、それも出来ないくらいシーズンの切れ間がなく忙しくしています。
インドネシアではまず戦術的なレベルでは無く、基本技術・戦術・小単位のグループ戦術からスタートしなければならない現状だったのでそこを急ピッチで進めて、トップチームは2012年以来の東南アジア選手権表彰台、U-20は東南アジア予選を突破してアジア選手権の出場権獲得、女子はアジア選手権ベスト8という結果を出すことが出来ました。
元日本代表監督でもあるミゲル・ロゴリゴ氏の率いる、非常に格上で強敵のベトナム代表にトップチームが歴史的勝利を挙げたことも、インドネシア代表の自信になりました。

 

ゲームアウェアネスプログラム導入のきっかけ

平林:すごい成果ですね。昨年まではバルドラール浦安の監督を務められていましたが、そこでチームにゲームアウェアネスプログラムを導入し、私と一緒にシーズン初めの数ヶ月前からプランニングをして、トレーニング改革から取り組みましたよね。プレーブック・ビデオ・ホワイトボードの「3種の神器」を使って、これを理解する部分にウォークスルー等をやりながら落とし込んで、パフォーマンスの部分で強度・難易度・スピードを上げてゲームに向かって訓練して行くトレーニングメソッドを採用したと思います。
年間のプランニングも戦略的に全体像を作った状態でのミッション型で進めて行きました。
そもそも、この「ゲームアウェアネスプログラム」をチームに導入しようと思ったきっかけは、何かあったのでしょうか?

高橋:当時のバルドラール浦安は他のチームと比べて練習回数が少なく、しかも夜の遅い時間帯での練習ばかりで、数年停滞しているチームでした。
そんな課題が多いチームの状況を打破したい、何かを大きく変えなければならないと思っている中で、現状を打開することに対するアイデアが欲しいと思っていたのがきっかけです。私自身もずっと浦安で育ってきたので、状況を打開するには違う側面の視野を持った方が必要だと感じていました。
それともう一つ、そもそも自分が監督を務めること自体初めてだったので、どういう言葉で選手たちをまとめていくか、どう言語化していくかという部分をサポートしてほしかったというのもありました。

平林:言語化の部分で、チームのキャッチフレーズやキーワードを作ることについては、かなり時間をかけましたよね。どういうターミノロジーを使って1シーズン戦って行くかというのは慎重に選びました。

高橋:ありがとうございます。他にも、私が目指していることに対して、「私はこういう風にアプローチしようと思っていますが、泰三さんはどうすれば良いと思いますか?」と、より良いアプローチをするためにはどうするべきかの相談をよくさせて頂いてアドバイスをもらえたのもとてもありがたかったです。
ゲームアウェアネスプログラムの中では月に2~3回くらいのペースで「タイゾータイム」という形でミーティングもして頂き、選手の取り組む姿勢やマインドセット等についても学ばせてもらいました。結局、そういうところが出来ていないと、いくら戦術や戦略があっても何も生まれないですよね。ゲームアウェアネスプログラムを通してそういうところの重要性を再認識できましたし、チームが一つになって選手一人一人が責任を果たす集団になっていないと何も始まらないな、というのを強く感じていました。

 

チームの「言葉」が揃っていくのを実感

平林:高橋監督の目指していたゲームモデルは、Fリーグの中でも最も複雑な戦術で、それを実現するために強度を高いところに設定して組んでいたので、日頃の練習からある程度の負荷をかけなければならなかったです。そうでなければ、練習回数もFリーグの参加チームの中で少なく、強化合宿も出来ないという環境の中では全く追いつくことができないので、日頃から負荷を上げて行きました。
ですがその分、選手たちにはストレスがかかり、その結果、試合や練習で様々なことが起こってきます。そういう日頃に起きる事象をマインドセットで上手く問い正して、少しずつゴールへ向かって行くプログラムでしたね。
実際にプログラムを導入してみて、チームとしてどういうところに変化を感じましたか?

高橋:やっていくうちに、最初にターミノロジーで設定した「言葉」がチームの中で揃っていくのが、選手たちの日々の発言から感じられるようになりました。そしてそれがあることで、少しズレを感じても言葉一つでチームを戻すことが出来ました。私自身もこれまで「言葉」というのは大事なことだと言ってきましたが、それを統一させ「チームの言葉」にしていく、そしてそれは選手自身から自然と発されていくようにしなければならないということを学びましたね。

平林:それは「規律の文化作り」の考え方の部分なのですが、コーチ陣から提案はするけれど結局やるのは選手ですから、選手たちから自然発生的に出てこなければ、これは文化にならないんです。どうやって選手たちから自然発生的に出させるかと言うと、監督が頭の中で考えていることを日常的に言葉に出して、選手たちに染み込ませて行くところから物ごとが始まります。

高橋:それは今でも本当に自分の中で大きな経験として残っています。
今、インドネシアという国で指導をしていますが、インドネシアは日本と比べると規律があまり無いんです。
そういう環境に来た時に、ゲームアウェアネスプログラムの中で得た、「自分たちが大事にしていく言葉」を追求する事で、さらにその一歩先に踏み込んだところでの「言葉の定義付け」がなされていくという経験が非常に助かった部分でした。

平林:バルドラール浦安で使った「5つの言葉」も活きていますか?

高橋:バルドラール浦安では「ポジティブ・勇気・率先・責任・ハードワーク」の5つの言葉を掲げて、毎試合ごとに「強度と脅威」を意識して追求して行ったシーズンでしたね。今のインドネシアでは「インテンシタース(強度)」という言葉に訳して落とし込んでいて、みんな「インテンシタース!インテンシタース!」とずっと叫んでいます(笑)。

 

指導者はあらゆることを想定し、選手たち以上の準備を

平林:バルドラール浦安でのシーズン最初の3ヶ月は「個」を強くすることに集中して、その後は徐々に「チーム」を強くするための仕掛けをしていきましたが、シーズンが始まってどれくらいで選手たちが変わって来たなと感じましたか?

高橋:シーズンが始まって1カ月半後くらいにあった、Fリーグオーシャンカップ(Fリーグの全国大会)で準優勝したのは大きかったですね。それで一気に士気が高まりました。それに「強度」という面に関しての選手たちのマインドも大きく変わりました。ターゲットがはっきりしていて、そこへ向かう準備が明確であったことが成果につながったと思います。選手たちにとっては大きな成功体験となりました。

平林:若い監督で就任1年目の一長一短があると思いますが、やはり良かった面は選手をフラットに選んで、まだ若手で無名の選手をバンバン起用して、その選手たちがブレイクスルーしたのは大きかったですね。
今、社会の中で「働き方改革」もそうですし、部活等に関しても「時短」がキーワードになっていると思います。
それはバルドラール浦安でも言えることだったと思いますが、「時短」で結果を残さなければならないという部分で、“ターミノロジー”の統一をしたことは影響がありましたか?

高橋:とてもありましたね。ターミノロジーの統一をしたことで言葉がスムーズに伝わり、例えば練習のセッション1からセッション2の間にかける時間はほとんどないくらいに、トントンと行けるようになりました。それまではそういうのをやっていなかったので、練習が始まってから「あれ?これ1タッチでやるんだっけ?2タッチでやるんだっけ?」のような無駄がありましたが、それを無くすことにつながりました。

平林:選手たちにハードワークを強いる以上は、監督・コーチ陣の準備も非常に大切になってきますよね。監督・コーチが選手たち以上に準備をし続けないと、選手たちには透けて見えますから。選手たちが欲した瞬間、選手たちがもっともっとやりたくなった時に、どれだけ監督・コーチが引き出しと備えを持っていて、どんどん選手たちに与え続けられて、繰り返し繰り返し同じような事があっても、対応してあげられるかがチャレンジですね。

高橋:泰三さんからエディ・ジョーンズさんの話とかも聞いて、やっぱり自分が言う以上は指導者自らが体現しないといけないなと思っていましたし、絶対に選手たちはそういうところをよく見ているので、準備に関しては私自身もかなり意識してやっていました。例えば練習メニューを事前に提示しておけば、練習会場に行ってその日になって突発的に「あれをやってみようかな?」なんていうことは出来ないですよね。
私自身はそういう風に事前に準備をしておくと決めていたので、しっかりと前日に練習ビデオを見て、相手チームの映像を見て、自分たちのやるべきことと相手への対策を結構な時間を使って考えて準備をしていました。

平林:1シーズンの活動の中で、ハイパフォーマンスチームに起こる問題って、同じようなことが起こりやすい傾向にあるんです。どこのチームでも起こり得ることが起こるので、そこで大事なのは、首脳陣がそれをきちんと予期して準備しておいて、事が起きた時にどの選手に対してどのようなアプローチを円滑に出来るかが腕の見せ所ですね。

高橋:そうですね。実際に、事前に揉め事とかが “起こる想定”をしていたので、そういう準備をしてシーズンに入るようにしていました。なので監督就任1年目で、いきなり選手同士が喧嘩し始めても、「え!?」という風にはならなかったですね。「やっぱり喧嘩になったか。オッケー、オッケー」と思っていました。いろんな戦術を入れているし、選手同士の考え方でぶつかり合うのは当たり前だし、色んなストレスがかかっている中で、監督に対してのイライラがあるかも知れないですからね。でもそれはチームが強くなる過程では必要なものとして捉えるがことが大事ですね。

平林:戦術的な面でゲームアウェアネスプログラムが作用したと感じる部分はありましたか?

高橋:泰三さんからラグビーという違った視点での戦術のヒントがもらえたのは助かりました。数的有利を作るとか、相手とのズレを作ったり、攻める“チャンネル”の考え方とか、元々自分の戦術イメージにあったものが再確認出来ることがありました。同じボールゲームですから共通点は多いですね。
泰三さんの知識が豊富なので、現場で起こったこと、起こりそうなことへの対応のアドバイスをもらっていたのもとても大きかったですね。例えば、チームの状況を見て、負け越して来た時にこのタイミングでミーティングをやるべきかやめるべきか、練習を切るべきか逆に増やすべきか、みたいなところを一緒に判断することが出来たのがありがたかったです。

 

ゲームアウェアネスプログラムは「時短」に効果的

平林:ありがとうございます。バルドラール浦安のように「時短」をキーワードにしたチーム運営にはゲームアウェアネスプログラムは有効であると感じましたか?

高橋:チームマネジメントの特にマインドセットの部分で有効だと感じましたね。
インドネシア代表で今回、東南アジアで3位という結果を残せましたが、インドネシア人は最初の頃は何をするにも「何のため?」みたいな感じだったんです。
その時の初戦がこれまでずっと負けていたミャンマー戦だったのですが、そこは絶対勝たなければならない試合だったので、ずっとそこの試合に向けて日頃の練習から「ミャンマー、ミャンマー」と言い続けてマインドをセットしていたんです。
すると試合の入りでも準備していた通りのことが出来ていたので、そういうマインドの部分でゲームアウェアネスプログラムが効いて勝てたと感じた試合でしたね。

平林:「時短」の問題に直面している全国の指導者がいると思いますが、何かオススメのアドバイスはありますか。

高橋:指導者の事前の準備も含めたハードワークが大前提の条件になりますが、その上で用意したものをどう選手に落とし込むか、選手たちの理解をどう進めて行くかというところでビデオの活用をしたり、俯瞰的にピッチを上から見たものを選手の目線に落とす練習をしたり、「言葉を揃える」ことでチームを1つの方向に向かわせたりすることが大切です。それを引っ張る存在も必要ですが、そういうものをまとめて使って行くとチームは崩れることがないと思います。
日頃、指導者自身の中に戦略や戦術に対しての自信を持っているのであれば、なおさらそれをどうやって落とし込むかという部分に悩みがあるはずなので、そういう意識の高い指導者にはゲームアウェアネスプログラムはオススメしたいですね。そういう意識が無いまま、他の人に「何かをやって下さい」というのはちょっと違うと思うんです。
指導者が持っているものを体現する為に選手やチームにどう落とし込むかというのが一番大変で、その為にたくさん試行錯誤しますので、その試行錯誤に対しての効率が必ず上がると思います。

平林:今日は一時帰国中で本当にスケジュールがタイトな中でありがとうございました。またインドネシアで旋風を起こして下さい。またアイデアをシェアして行きましょう。

高橋:ありがとうございます。頑張ります!監督補佐引き続き宜しくお願いします!

(2019年1月初旬 取材)

 

高橋健介 氏について

▪️Instagram

https://www.instagram.com/kensuke.takahashi/

▪️高橋氏のアドバイザリー契約メーカー「PENALTY」

http://www.penalty.co.jp

 

平林泰三 プロフィール

・名前:平林 泰三(ひらばやしたいぞう)
・生年月日:1975年4月24日
・血液型:AB
・出身地:宮崎県

2005年にアジア人初となるフルタイム(プロ)レフリーとなり、世界中で活躍し、数百試合でレフリーを務め、2007年には『Newsweek』誌において、「世界が尊敬する日本人100人」に選出されました。
ラグビー日本代表のバックルームスタッフとしてゲームやレフリー分析などに尽力し、2015年のラグビーW杯イングランド大会で繰り広げた強豪チーム・南アフリカ代表との一戦での劇的勝利にも貢献。
現在は各スポーツ団体に対し、新しいコーチングプログラム「ゲームアウェアネスプログラム」の開発・指導を行っています。

2018年10月1日より当社とマネジメント契約を締結

 

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